子どもの頃の原稿の切れ端を集めて投げ込んでいる桐の箱がある。
便箋やルーズリーフ、今となっては取り出すことも不可能な保存媒体。
本編「王子の小鳥」は、昔に書いた「黒い森にて」が原本であり、これには
「レンシェの鳩」という副題がついていた。
『黒い森にて 〜レンシェの鳩』
このサイトに収録してある短篇「レンシェの鳩」の題名は、そこから拾ってきたものだ。
原稿用紙にしてほんの十枚ほどのこの掌篇を当時の私はいたく気に入っていたらしく、
黒画用紙で表紙までつけて製本し、イラストまで描いていた。
a.「黒い森にて 〜レンシェの鳩」
b.「レンシェの鳩」----※「黒い森にて」とは別の筋立て
c.「王子の小鳥」----※「黒い森にて」を改題
aとbは別ものではあるが、本編中で”王子の小鳥”と愛称のついている少女は、
原本「黒い森にて」においてはその副題どおり、”レンシェの鳩”と呼ばれている。
何しろ原稿用紙十枚程度の物語なので、増やすところも削るところもない。
何のひねりもないし、常ならば公開する必要を認めなかった。
しかし、「レンシェの鳩」は本編中のあの歌から船出して行ったのであり、私の物語に
よく出てくる男装した少女の原型も、濃厚にこの中にある。
この短い話からどれほど多くの物語が芽を出していったことだろう。
黒い森が荒野に。旅の僧侶が旅の男に。レンシェの鳩が王子の小鳥に。
この変更以外は、ほぼそのままである。最後の歌も。
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