[ビスカリアの星]■八三.
タイラン・レイズンは都の宮廷に出入りすることも、華々しく女人と
浮名を流したり、交際することもなかったが、母をはじめとする分家の
女たちに長年つき合わされ、よく見てもいたので、兄ミケランが思って
いるよりは、はるかに女の心の機微には敏く、醒めており、その必要があれば
女人と接することも躊躇うことなく従容としてやる男だった。
「どうぞ、涙をお拭き下さい」
彼は手布を差し出して、リリティスにそれを手渡した。
「晩餐の時からお元気がないので、気にしておりました」
「それは」
リリティスははずかしくなって俯いた。よく気がつく主人ならば、席上で浮かない
顔をしている客人にも心を遣い、晩餐の間中気を配っていたはずである。
確かタイランとは、フラワン荘園に咲く花々の種類について会話を
交わしていたと覚えているのだが、その時もさぞ心ここにあらずの沈んだ
顔つきをしていたのだろう。それからずっと気にかけていてもらっていたとは、
心苦しいことだった。
リリティスは眼を拭った。
「お気遣いをいただきまして、ありがとうございます。慣れぬ旅など
いたしましたので、疲れていたようです」
「その涙もですか」
「家のことを想い出しておりました。緑が眩しくて」
「リリティス姫」
「はい」
「兄のように気の利いた慰めは云えませんが、この庭には滅多に
人が入りません。誰にも云いませんから、遠慮なくお泣きになるといい」
「タイラン様、私」
穏やかな促しに、若いリリティスの眼からはまたも涙が落ちた。胸の中が
ぐちゃぐちゃで、とても整理がつかないが、タイランの言葉があまりにも優しい、
裏心のない心に沁みるものであったので、抑えかけていたものが内から
再び溢れてきた。
どこか植物的なところのあるタイランのもの静かな寛容の態度は、下手に
理解やその場しのぎの包容を示されるよりも、リリティスに息をつかせた。
無色透明といっては何だが、奇しくもそれは、カルタラグン宮廷の中で
噂に踏み潰されそうになっていたリィスリに対する、カシニ・フラワンの
受身な接し方と同じものであった。そして、人の心に寄り添って同じ処にまで
静かに降りていける繊細な者でなければ、到底出来ないことでもあった。
こんな時においても、リリティスは、タイランが不自由な脚を引きずって
自分を庭まで探しに来てくれたということがまず真っ先に申し訳なく
思われる、そんな娘であったから、ほとんどタイランの為に、途切れ途切れに
泣いている言い訳をはじめた。
「本当におはずかしいことです。宴席で、誰よりもお辛いであろうクローバ・
コスモス様が全てを堪えてご立派に振舞っているのを見て、私は何とつまらない、
堪え性のない、些細なことにも我慢の出来ない、未熟な人間なのだろうと」
支離滅裂なことを拙く、ゆっくりと喋りながら、リリティスは涙の流れ落ちる
頬を抑えた。
そよ風に木々が光を連れて揺れ、噴水の青い水の上に風紋が生まれた。
否定も肯定もせず、タイランは礼儀ただしい間をあけてリリティスの隣りに坐り、
黙ったまま前を向いていた。
タイランは何が辛かったのかも訊かず、そしてリリティスにも、それが何かは
分からなかった。
「クローバ様も、タイラン様も、ミケラン様も、エステラさんも、ソラムダリヤ
皇太子殿下も、みなご立派なのに、私一人が小さなことにとらわれています」
その小さなこととは、何なのだろう。
あちらからこちらへと、すいすいとリリティスの心を翻弄してしまうミケランだろうか。
それとも素直な好意と愛情を隠さない、その分だけ子供っぽく見える
ソラムダリヤだろうか。
周囲の者たちが、かくあれかしと押し付けてき、さもなくば「不幸な人だ」と
真上から決めてかかってくる、お定まりの、何かの歪みだろうか。
「タイラン様」
まとまりのつかぬまま、リリティスは細々と訴えた。
「人は、人の振りかざすものに迎合して生きなければなりませんか。
そうしなかった者は、彼らがその後、口を揃えるように、不幸でなければ
ならいのですか」
「とんでもない」
「語り手の経験と水準から導き出される憶測でしかないことが、いつの間にか
事実として広がって、私という人間を身動き出来ぬほどに決めてしまう。
私以外の人間が、私の人生の主役のようにして、私についての多弁をふるう」
ことさらのごとく云いたてられるそのどれもこれもを少し注意して聴いていたら、
そのことは分かるはずなのに。
「それに疲れて、何となく心が塞いでしまったのです。いつも思うのです。
誰かが底意をもって好き放題に語っているにしか過ぎない話を、どうして人は
その当人をよく知ることもなく、鵜呑みに信じてしまうのでしょう。
もっともらしいというだけの浅はかな知恵や見解を披露することに喜びを覚える
語り手の雄弁のとおりに、人はそういった出来合の噂を好み、真実と判断
してしまう。彼らは、いったい何に頑張っているのでしょう。
それとも、そうやって誰かのことをあれこれと取り沙汰し、傷つけることでしか、
彼らの自己顕示欲は満たされる機会はないとでもいうのでしょうか。
その話の中には彼らの語る誰かだけがいて、私自身はいないのに」
タイランがあまりにも静かなのでその繰言は、木か花か、植物に向かって
喋っているようだった。しかし、水がやわらかな土に浸みこむようにして
この人が誰よりも誤解や曲解なくありのままに聴いてくれているのだと
いう気もして、そこに哀しみが吸い込まれるように、徐々にリリティスの
涙もとまり、気持ちも鎮まっていった。
緑の風の中、リリティスは白い指を膝の上で組んだ。
レイズン家に生を受けたタイラン様なら、お分かりでしょう。私たちのような
生まれの者が、少しでも私たちよりも優れていると云いたがる者たちから浴びる、
ありとあらゆる干渉のもの凄さを。
「わからせてやりたい、教えてやりたいだの、どうしてああも一方的に
押し付けがましく、それに感謝しないというので、不幸だと大声で
責められなければならないのでしょう。そのような恩など、全ては相手が
私たちよりも上に立った気になりたい、そしてそんな自分を世間に向けて
ひけらかしたいという、自分本位の欲望にしかすぎぬのに。まるで親しくもない
他人の意見や言葉ばかりが先に立ち、自分が全く存在していないような
気持ちになって、情けなくなってしまったのです。くよくよと、私は莫迦ですね」
すすり泣きも消えてしまうと、あとには沈黙が流れた。
木漏れ日はリリティスの髪に美しい環をつくり、そよぐ葉は、その白い頬に
蒼い陰りを与えた。そよ風がリリティスのドレスを揺らして過ぎた。
タイランは黙って隣に坐っていたが、かなり経ってから、ようやく口をひらいた。
「落ち着きましたか」
リリティスは無理にも微笑んだ。
「はい。ご迷惑をおかけしました」
「領主なので」
領主なので、城に迎えた客には責任があるという意味だろうか。
陽射しをぬって来るやわらかな風が心地よかった。
リリティスは立ち去りかねた。
ミケランならば、ここは言葉を尽くし深い洞察力を示し、さりとて相手を責めず
追い詰めず、歪めようたわめようともせぬままに、気がつけばミケランの
思うとおりの方向で力強く励ましてくれるといった方法で慰めてくれるのであろうが、
同じ兄弟でもタイランのそれはまったく違っていた。
タイランは趣味の園芸に没頭しているばかりのぼんくらではなく、実のところ
実務面においては先読みも、誠実で、的確な対処も出来る、頭の切れる
男であった。殆ど自分の感情や意志を表には出さぬものの、しっかりと
周囲のことは見ており、困難を極めると思われたコスモス領主就任後も
要所要所はきちんと抑え、自ら「暫定的領主」と表明しながらも、早朝から深夜まで
コスモスについて学ぶことを学究的熱意をもって疎かにはしておらず、その謙虚と
真面目さで城内外の者たちの敬慕を曇りなく勝ち得たという御方であったから、
華々しい兄の日蔭で目立つことのなかった柔和なその面の裏には、どうして、
レイズン家ならではの知能が詰まっているのであった。
その上でミケランとタイランの人生を隔てた違い、それはひとえに、タイランが
世の中よりも人間よりも、もの云わぬ草花にもっとも強い関心を抱いたからに
他ならない。
小さな種から樹木が育ち、花を咲かせる。その魔法にとりつかれた彼は、ミケランが
政治の上でそれを行うのと同様の計画的種まきとまびきと剪定を、植物の上に行った。
そしてミケランが古きを壊し新しきものを創ることに脅迫的ともいえる情熱を
傾けているのだとしたら、タイランはその逆で、あるものをあるがままに認め、
そのままに調和し、愛することができた。
そんな彼だからこそ頑固なコスモスの人々にも受け入れられたのであるし、学問を
愛する善良な学者には敵がいないのと同様に、彼の人となりの一端に触れた
リリティスの胸にも、自然と尊敬の念が生まれつつあった。
タイランはリリティスを特別に扱うこともなければ、持ち上げることもなく、他人への
敬意をもって大切に接しているのであり、たとえ彼がミケランと同種の深い洞察力を
もってそれを言葉に代えることが出来るのだとしても、彼はそれをしない男であった。
タイランの内的な安定がそのまま伝播するようにして、リリティスはすっかり鎮まった。
ようやく余裕が出て、リリティスは辺りを見廻した。
「こちらのお城には、小さなお庭がたくさんあるのですね」
「あと二十はあります」
「そんなにも」
「趣きがあるので、極力手は入れておりません」
「古いお城には、この方がかえってゆかしく、何よりも心が安らぎます。
コスモスはお伽の国。あちらのお花も、とてもきれいに咲いて」
「あれは、レイズン領のわたしの庭園から移植した花です」
「まあ。ずっと此処に咲いていたもののようです」
リリティスは感心してしまった。
若い娘が植物に興味を示したことがタイランには単純に嬉しいようで、
ほんの少し彼は微笑んだ。といってもかなり控えめであったが。
「他の庭にも色と香りのよいものが咲いています」
「ぜひ、拝見したいですわ」
「人を呼んで、案内させましょう」
「いけない。ごめんなさい、タイラン様」
領主の時間をとっている。
さらに、タイランの脚が不自由であることを、リリティスはすっかり忘れていた。
涙にあらわれた眸をした新緑の中のリリティスは若さそのもの、つぼみの
開きかけた女の美しさそのものだった。
「皇太子妃となられるとか」
リリティスの手を借りて噴水の縁から身を起こしたタイランは、リリティスの指先を
挨拶代わりにそっと握り、そして解いた。
趣味の土いじりをするせいなのか、少し荒れて、乾いた手だった。
「ソラムダリヤ皇太子殿下とはお似合いのご夫婦となられることでしょう。
お倖せをお祈りしております」
言葉以上の意味など何もない、やわらかな心遣いだった。
先刻まで何よりも重く感じられたことであるのに、不思議と、リリティスには
そう云われることがもう苦しくも、厭わしくもなかった。
無理やりなものでも、そうせねばならぬ重荷のものでもない、誰かの声高な
訴えごとが付属しているものでもなければ、運命でもなかった。
タイランの言葉はリリティスの心にそのまま届き、心の外へと広がった。
緑の木々がそのように生え、花がそのように咲くのと同じ、何かの理の中に
大きく包まれて、祝福され、広い未来があるような気がした。
庭から出てきたリリティスの姿を、城の狭間からミケランはエステラと並んで
眺めていた。
「暗い顔をされているので気にしていたが、タイランがうまく宥めたようだ」
「その原因を作ったのは、ミケラン様でしょうに」
エステラはミケランの背に頬をつけた。ミケランの片手がエステラの手に
重ねられた。
リリティスは、タイランが摘み取ってやった白い花を手に持っていた。
城の中にリリティスが消えてしまうまで、ミケランとエステラはその姿を
上から追った。
「人を支える時にはね、支えないことが肝要なのだよ。
その人のことを本当に気遣う控えめな、優しい気持ちが、その人の
心を動かし、前へと進ませてやれるのだ。それ以外に何があるのかね。
人の力になってやろうとするならば、ただその人のことを好きでいるだけでよい。
その人を大切にするまことの心ほど言葉少なく、静かなものだ。
聞き入れる側もね、相手が己のことを優しい心で案じてくれていると
分かるからこそ、はじめてそちらへと手を差し伸べるものなのだよ。
互いを思い遣るからこそ、自然とそうなるものなのだ。人を大切に
してやることについては、タイランほど優しい男はいないからね」
リリティスが消えた後も、ミケランの眼は、リリティスの姿を惜しんで
いるようだった。
「本当はソラムダリヤ様が、あの役割をされるとよかったのだがね。
殿下はお優しいし、意外とあれでいて心を決められた時には
思い切ったことをされるのだ。お立場上、滅多にないことだけれどね。
リリティスを妃として迎えたいと云った時の殿下は、よいお顔であられた。
決してわたしの手柄ではないけれど、微力ながら、教育係として殿下の
自立をまもり、お育てもうしあげた甲斐があった」
「女の子の心をもてあそんで」
「リリティスには何もしていないが」
「いけない方」
「皇太子妃になることはおめでたいことだ。それまでに何の想い出もないとは
味気ないことでもあるし。もちろん誰よりもリリティス姫の倖せを祈っているよ」
「よくおっしゃるわ」
エステラはミケランの腰をぎゅっと抱いた。
「お好きでいらっしゃるくせに」
「ソラムダリヤ殿下もね。お二人とも本当にお若くて、何もかもがむき出しで、
些細なことにも躓いて、深刻に悩まれて、危なっかしいからね。
純粋培養のせいか、まったくもってお繊細で真っ白だ。ご本人はいっぱしに
不幸のどん底にいる気なのだろうし、その深刻さに偽りはないにせよ、
わたしなどの眼からは穢れのない、日向でないている幼い雛にしかみえないよ」
「ご自分の時はそうではなかったと?」
「貴女もね、エステラ」
自分はそうではなかったと。
そうやって、誰でも、自分と他人を否定的に比較しているものなのだろうか。
そこからは、古い塔が見えた。
ヴィスタチヤ帝国成立以前、古代コスモス王国の時代からこの地にあったと伝わる
石積みの塔は、古めかしいという他は何の特徴もない、この地上から国という国が
滅びさったとしても、緑の中に永劫に建っているのかと思われるような、古色蒼然とした
灰色の塔だった。
「ヴィスキュダルの巫女さまには、いつ、お逢いになれますの」
「さあ。その件については、タイランがはぐらかえすので」
「焦らないのですね」
「もう此処まできたのだ。その気になればすぐに、この手が届くところに」
コスモスを一望する胸壁に立つミケランに身を寄せて、エステラは風に吹かれた。
この方は怖いのだ。臆病者のそれではなく、武者ぶるい的に、この先に待つものを
ずっと畏れているのだ。そしてその畏れの正体を見定めるために、こうして此処まで
やって来たのだ。
「わたくしも逢えましょうか。その御方に」
「無理だろうね」
背中に顔を寄せているせいで、男の声はその心から直接響いてきた。
「塔に篭り臥せっておられるそうだ。しかしながらタイランが頻繁に塔に脚を
はこんでいるところをみると、お加減のよろしい時もあるようだがね。
この城の主は弟の彼なので、こちらは客分であることをわきまえ、意向を
伝えた上はおとなしく待機しておくつもりだよ」
おとなしくしておくなど、嘘ばかり。
しかし、エステラはコスモス城下の田園風景を眺めるにとどめた。
踏み超えてはいけない一線はどれほど仲の良い男女にもあるものだ。ましてや、
決して胸襟をひらかぬ男の本意など。
君よ知るや、彼は若かりし或る日、この世界をゆり動かしてみようと思い立ち、
それを成し遂げた男。それから急速に全てのことに関心を失い、内なる世界の
箱庭をこの地上にせめてもと築いては、膨らみ続ける理想郷への夢はそのままに、
星空を夢みてながく無為の時間を過ごしてきた隠居の男。
「ミケラン様」
エステラはミケランをしっかりと抱きしめた。
「この先どうなろうと、わたくし、ずっとお傍におりますわ」
姿も見たこともない故アリアケ・スワン・レイズンの魂が、まだ心配そうに
ミケランの隣りにひっそりと薄く漂っているようだった。その気配はエステラの
想いとも同化し、同じ女の気持ちとなってコスモスの風となり、ミケランの傍から
離れようとはしなかった。
それとも、それも、此処がコスモスだからだろうか。これはただの感傷だろうか。
庭に揺れるは、故人が好きだったという、白い花。
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コスモス城内の騎士の詰め所は、穀物蔵を改造した
天井の高い平屋である。
平時ならば、田舎の城らしく鶏なども迷い込むそこであるが、今は主だった
騎士たちが集結し、窓と扉に見張りを立て、密談の場所と化していた。
俺には、それを承知することはできん。
そこに宿泊しているクローバ・コスモスは、併設の屋内稽古場でうなだれた。
「そんな」
「何をおっしゃいますか、クローバ様」
クローバの言葉を待っていた騎士たちが、大挙してクローバの周囲に
押し寄せる。
クローバは埃っぽい卓の上に肘をのせ、組んだ手の上に顔を伏せるように
しながら卓上の一点をじっと睨むようにしていた。
コスモスの城に入った後、クローバはこの詰め所に閉じこもり、平騎士たちと
同居して、粗末な寝台に眠っていた。「クローバ様に」付近の領民たちの
差し入れは引きもきらなかったが、それらの鳥や野菜はありがたく気持ちだけ
受け取って、城の厨房へと回し、皆にも分けた。
浮かぬ顔をしていたリリティス姫のことだけは少し気がかりであったが、
ミケランの奴がどうにかするだろう。
室内の埃が粉雪のように煌きながら窓からの日差しに踊っていた。
クローバはもう一度低く度云った。
「できぬものは、できん。悪いな」
騎士たちは安堵した。
ああよかった。クローバ様は少しもお変わりではない。
(それどころか、苦難に磨かれなすって、以前にはなかった凄みのような
ものまでまとわれておいでだ。こうでなくては)
コスモス騎士たちは眼を光らせて顔を見合わせた。
クローバ・コスモスを差し置いて俺たちの主導者となるべき人物はいない。
何としても、クローバ様を説得し、我々の計画にご賛同いただくのだ。
クローバを囲んだ彼らは、ひそやかに求めた。
「クローバ様。ミケラン・レイズンを斃しましょう」
「二度と口にするな」
手を組んだまま、クローバは騎士たちを睨んだ。荒げぬ口調であったが
ずしりと響いた。
「この城はタイラン・レイズンの治める城だ。お前たちはコスモスを護る騎士だ。
忘れるな。コスモスはもう俺の国ではない」
騎士たちは一斉にその場にざっと片膝をつき、片手を胸にあてた。彼らのその
眸にはクローバへの真剣な、真剣すぎるほどの、ひたむきな忠誠しかなかった。
「我らの主君は御身ただ一人」
「クローバ・コスモス。御身の旗こそ、とこしえに」
騎士たちの平伏を前にして、クローバは無言であった。クローバほど騎士たちの
生き様とその性情をよく理解している男はなく、それがために無言であった。
ジュシュベンダのイルタル・アルバレスが、或いはハイロウリーンのフィブラン・
ベンダがそうであるように、クローバもまた、騎士にはその本能のままに生きるに
あたり、命を賭ける偶像を渇望し、何の見返りも求めずにその為に死に、
それだけをせめてもの誉れと思うことを、永年身をもってしかと受け止めてきた
男はいなかった。その重責に平然と耐え抜くのが高位騎士というものだった。
騎士国の領主というものだった。
クローバは騎士たちを見まわした。
北方三国同盟の傘の下にあり、他国に比べれば戦らしい戦もない国とはいえ、
それでも竜の血の呪いは免れず、こうして田舎騎士たちがその真摯のあるたけを
傾けて自分をひたむきに仰いでいる。
「クローバ様」
こんな際にはいつも戸惑いを覚える。
彼らが求める役割を演じなければならぬことへの抵抗と戸惑いを覚える。
こういった重責が自尊心を満たす快感となる男もいるのだろうが、俺は違う。
久方ぶりに味わう懐かしいその空疎を胸の中で握りつぶし、しかし面には
毛筋ひとつも出すことなく、クローバは口を開いた。
「俺は」
ここに待つ騎士たちは、高位騎士クローバの言葉を至上のものとして聴く。
「俺は、コスモスが好きだ」
「クローバ様」
「ミケラン卿を斃してどうなる。その時はコスモスが責を問われる時だ。
お前たちの多くも処分されるだろう。卿を斃してどうなる。復讐にしかならん。
制圧軍によって田畑が荒らされるだけだ。それでは、何のために此度、皇帝が
皇太子を大使に立てて下さったのか分からん。この国の存続を危うくするような
真似は、俺にはできん」
「しかし、ミケラン・レイズン卿が帝国の敵、騎士の巫女の敵であった場合は
その限りではありません」
内心の逸りを抑えた顔つきで、コスモス騎士たちはじりじりとクローバに
にじり寄った。
ミケラン・レイズンを討つ。
それはコスモス騎士団の悲願であった。
タンジェリン殲滅戦の余波として、レイズンに恭順しなかったコスモスは、領主の
交代と、タンジェリンの血を持つフィリア・コスモス・タンジェリンの自害をもって、
追罪を問われることを免れた。
その一幕の裏では、レイズン軍相手に玉砕覚悟で武装待機していたコスモス
騎士団があったのだ。
コスモスの城からフィリアの亡骸が晒し刑にされる為にヴィスタの都に
運び出されてゆくのを断腸の想いで見送ったのは、彼らであった。
カルタラグン王朝転覆後、政治の表舞台から黙殺され、徐々に弾圧されてきた
タンジェリン一族は、迫害に耐えかねた一斉蜂起の後に、フィリア・コスモスの
自害を加え、ミケランの思惑どおりに地上より潰えた。
「あの日より、我ら、一日とて心安らぐ日はございませんでした」
「分家の成り上がりごときに、フィリア様をむざむざと殺されてしまったこの
無念、如何にして晴らせましょうや」
騎士は涙を浮かべていた。
「女の身ひとつでルビリア・タンジェリンがミケラン卿に剣先を
向けているというのにコスモスの連中ときたらどうだ」
「領主ご夫妻をお護りすることを放棄して、レイズン家の新領主に下った
腰抜けども」
いくらそれが已むにやまれぬ究極の選択であったとしても、領主交代以後、
他国からコスモス騎士団はそう見做されるようになったのだ。
それはそれ以上悪くなりようもないほどの、冷ややかな軽蔑にして、決定的な
屈辱であった。「臆病者といえばコスモス騎士のこと」と、そこまで巷間では
侮りが盛んであったのであり、ただでさえ誇り高い騎士たちにとってそれは、
騎士であることそれ自体を否定されたに等しい、末代までの拭えぬ恥辱であった。
それであればあるほど、コスモス騎士は、ミケランを深く憎悪した。
ミケラン・レイズンはその登場当初より内外に敵を多く持つことが宿命づけられている
男ではあったが、コスモス騎士団にいたっては頂点から末端まで、日々の稽古の
合間にその胸中で打倒ミケランの念を血の滲む想いで噛み締めぬ日はなく、いっそ
のことミケランを暗殺しに飛び出そうとする騎士たちも後を絶たず、それに対して
領主タイランが先んじて手を打ち、彼らの愛するコスモスの、古橋や城壁の崩れたる
ところへ必要土木作業要員として騎士たちを分散していなければ、とっくの昔に
変事となっていたはずである。
彼らは一縷の望みだけを心の支えとした。
彼らの真の領主が生きてジュシュベンダに健在であることだけが、希望であった。
彼らは待った。クローバ・コスモスが帰還する日を。
ミケランが高位騎士であるということは、常人が想像する以上に、平騎士に
とっては脅威の壁である。彼らが騎士である限り、騎士の血がそれに対して
畏怖を強いるのだ。
一対一では力及ばず討ち果たせぬは明白、かといって大勢で取り囲むことも汚名に
汚名を重ねるさらなる卑怯。
偶像崇拝のごとく、彼らはクローバを求めた。ミケランに対抗するもう一人の
高位騎士の旗印を、彼らの先頭に立てることを。
「駄目だ」
クローバは態度を崩さなかった。騎士たちの切望が理解できるだけに、それは
認められなかった。
「ミケランが帝国の敵だと。どこでそんな知恵を仕入れた。
帝国の繁栄と善政、安寧を、ミケラン卿が為すほどに、ほかの誰が
出来たというのだ。独裁者。莫迦な。大局をもって彼が即断即決で
あたることに、人の頭と理解がついていかぬだけの話だ。それが証拠に、
帝国の双璧ハイロウリーンとジュシュベンダはこの廿年、ミケランの政治を許容し、
甘受してきたではないか。卿が、帝国を悪いようにはしないからだ。
視野が狭いのは小国に閉じこもっている我々のほうだ。私怨にとらわれて
本質を履き違えるな」
「そこがおかしいのです」
騎士たちは身を乗り出した。
「聖騎士国の談判によって行われるべきことが、全て、ミケラン卿の独断によって
施行されている。巧妙にもミケラン卿はレイズンの名を全面には出さず、皇帝の
親政であるかのように見せかけていますが、大事を私利私欲尽くしの
ミケラン卿の一手に握られているこの現状が、よいわけがありません」
「何故いまさらそれを問題にする」
姿勢を崩さぬまま、クローバは男たちを睨んだ。
「カルタラグン王朝転覆とそれに続くジュピタ皇家の復古、改新に伴う混乱は
ミケラン卿の采配で考えられる限りすみやかに収束し、コスモスは今も、昔も、
蚊帳の外だったではないか。物事を騎士国で仲良く話し合って決めよとは
聴こえがいいが、それとても、所詮は誰かの保身や野心がことの流れを決めるのだ。
せいぜいが、烏合の衆が集まって、己らの顔色をうかがっているだけ。
談合など、上っ面の塗装にしかすぎん」
さもそれこそが正しいという顔をしているその分だけ、笑わせるし、反吐が出る。
クローバは組んだ手を崩さなかった。
「それに比べて、ミケラン卿はたいしたものだ。そのこと自体に惹かれはせぬが、
二十歳になるやならずの若者が、決断と勇気、皇帝の学弟という立場を
わずかばかりの武器にして、あの改新を実行してのけたのだからな。
様子見を決め込んでいた大国はその時点で出遅れたのだ。それから現在まで
一切をミケラン卿の肩の上に負わせて、ていよく騎士国は傍観していたに過ぎない。
といってミケランが好きでやってることなのだから、恩に着る必要も、ありがたがって
彼を聖人君子のように崇めてやる必要もないのは確かだがな」
「ミケランほどの独裁者がおりましょうか」
「卿ほどの傑物において、それが何故いけない」
クローバは云い切った。
「私財を蓄え、賄賂をばら撒いたとしても、それに見合った還元はよりよき方向で
国に返している男だ。騎士国の自主を最初から認め、許容している男だ。
今ある壮麗なヴィスタチヤの都は、卿が無償で創ったようなものだ。
あれこそは、卿の夢が創り上げた、純粋なる理想の具現化だ。
苦労者気取りなど微塵もない、無欲無心に等しい夢の追求だ。しかも卿は
それを国の事業とすることで、四方を丸く収めた上でしてのけたのだ。
それを、今さらなんだ。お前たちはなんだ。これまで露ほども頭に浮かべたことも
ないことを尤もらしく並べ立て、ミケランさえ排除すれば世は太平になると
短絡的にも思い込みやがって」
だんだん口汚くなるクローバの話は途中から、田舎騎士たちの理解を超えていた。
彼はそれに気がつき、もう少し即物的に云い改めた。
「いいか。ミケラン卿を殺めることは、コスモスの血が流れることだ」
「フィリア様の復讐を果たされたいとは願われぬのですか」
「個人の遺恨で国を危険にさらすような莫迦は百回でも死ね。何の為にあの時
俺がコスモスを出て行ったと思っている。護るべきものはコスモスだ。国の民だ。
それが出来ぬで何が領主、何が騎士。騎士の誇りはそのために使うのだ」
「クローバ様。クローバ様は、ミケラン卿のお味方をなさるのですか」
「味方。敵。そんなしゃれた区別が出る幕ではない。かりに俺がミケランに怨みを
抱いていたとしても、それは一国を難にさらすには値せん。俺は、ミケランが憎い。
だがな、あの男を評価する眼は曇ってはおらん。ミケラン卿が帝国の敵だと。
ユスキュダルの巫女を害するだと。ただの流言だ。与えられたごく僅かな情報を
頼りに、お前たちを利用しようとする煽動者の意図する通り、お前たちは卿憎しの
一念で卿をいやしめ、頭をかすませてしまったのだ。コスモスを危険にさらそうと
いうのだ。そんな話、誰に吹き込まれた」
「あとは、わたしの口からご説明いたしましょう」
よく響く若々しい声がして、騎士たちの後方から、知らぬ顔が現れた。
その男は身のこなしよく、若く、黒髪を後ろで一つに結わえ、しかし貴人に
似つかわしからぬ皮肉な笑みを口許に浮かべていた。
このような薄汚れた場所にはもっとも似つかわしくない、一見して高い身分の
者としれる青年で、かすかな笑みからもその驕りが推し量れた。
青年は歩み寄ってきた。
最初からクローバは近くに立てかけてある剣を手に取ろうとも、見遣りもしなかった。
黒髪の青年にとっては、それはそのまま、いつまでも慣れることのない
蔑みであるようで、そのためにも、ますます青年の笑みは深くなった。
「クローバ・コスモス殿。お初にお目にかかります」
「誰だ」
「ジレオン・ヴィル・レイズン」
「……生憎だな」
ややあって、クローバははじめて動きをみせた。彼は手近な騎士を呼びつけた。
「こちらのレイズン本家の御曹司殿を城外へお送りしろ。俺の知る限り、
城には招かれてはおられぬ方だ。騒ぎ立てることはない、裏門から」
「クローバ殿」
青年の声が冷静にそれを遮った。
「わたしはちゃんと招待されているのです。他でもない貴方の前で
こう呼ぶことをお赦し下さい、現コスモス領主タイラン・レイズン様によって」
追い払おうとしてもそうはいかぬぞと云わんばかりに、青年、それはまさに
撤退したはずのジレオンであったが、ジレオンはクローバの向かいの椅子を引き、
砂埃をさっと払うと、粗末なそれに腰をおろした。
今度こそクローバは強い怒りの眼を騎士たちに向けた。
「お前ら」
「クローバ殿。彼らを責めぬように」
「お前ら、コスモスをレイズンに売る気なのか。それならば、俺はもう
お前たちとは同じ席にはいたくはない」
「まあまあ、クローバ殿」
ジレオンが穏やかに引き止めた。十歳は年長の高位騎士に対しても、レイズン
本家の直系であることを自負するジレオンは臆してはいなかった。
「失礼ながら、いまの一部始終は聴かせてもらいました。
寡黙なことで知られているクローバ・コスモス殿も、必要があれば
説得に言葉を惜しまぬのですね。尤も内容が意外にもミケラン卿の
賛美だったので、盗み聞きしているこちらはいささか閉口しましたが」
くすりと、青年は笑った。
「人間はいじましい。他人が褒められるのを聴くと、無条件にくさしたくなる。
何の益にもならぬのにそうして貴方が卿を庇っておられるのを見ていると、
味方をするふりや、庇うふりをして人を貶し続けている、巷の輩の心の醜さや
ずる賢さがよく見えます」
「コスモスに何の用がある。ヴィスタル=ヒスイ党」
「おや、これは」
ジレオンは微笑んだ。
「ほんの気まぐれで立ち上げた党ですが、名前のせいか、浸透が早かった。
実質は何の活動もしておりませんが、そうと見做して下さって結構です。
タイラン・レイズン様は、そのヴィスタル=ヒスイ党の幹部と知りながら
わたしをひそかに城に招き入れて下さったのですよ」
「コスモス騎士団を篭絡しにか」
「利害の一致と云っていただきたい。ミケラン卿を討つためにです」
それを聴いたクローバは静かに眼を燃え立たせた。
そんなクローバを前にして、ジレオンは、あくまでも笑みを浮かべていた。
二人きりで話したいというジレオンの意向を受け、コスモス騎士たちは
クローバとジレオンを残して、声の届かぬところまでさがっていった。
椅子にどしりと腰をおろし、クローバはジレオンを睨みすえた。
「穏やかにいきましょう。討つとは云いましたが、出来れば穏便に済ませたい」
ジレオンは云った。
「これを契機に、おじ上には引退していただこうと思っています」
「知るか。レイズン内部のお家騒動に、当家を巻き込むな」
「貴方はもうそれを求めることが出来るお立場ではないでしょう、クローバ殿」
「なら、何を俺と話し合う」
「こちらの騎士団の諸兄らは、貴方の命令しかききませんからね」
ささやかな侮辱とおだてを織り交ぜて、レイズンの血をもつ者らしく、ジレオンは
話し合いの主導権を握ろうとした。
「誤解なきように。これは、タイラン様のご意向でもあるのですよ」
ジレオンは神経質に机の上の砂を払ってから、肘をそこにのせた。
「皇帝から治安に関する全権をいただいているミケラン卿は、それを前面に
押し出し、ソラムダリヤ皇太子殿下の警固の名目でコスモス城への
入城を果たしました。これに危惧を覚えたのは、タイラン様です。
まあお気持ちは分かります。ユスキュダルから巫女をおびき出した
ミケラン卿が執念深くもこうして再び巫女の目前に迫ったのですから。
コスモス領内において巫女を害されでもしたら、ことは責任問題を超えて
怒り狂った外部騎士団たちの突入により、コスモスにどのような禍が
降りかかるともしれません」
「それで」
「こちらから申し入れたのです。レイズン本家がコスモス城を見張りましょうと。
それだけではなく、主要騎士団にも監視を依頼しました。これは現在のように
各騎士団が自発的にコスモス近郊に領土侵犯をおかして集結するのではなく、
ゾウゲネス皇帝陛下の命によるものです」
「何だと。皇帝の命だと」
「皇帝陛下は、巫女と皇太子殿下のお入りになったコスモスの安全を
第一にお考えです。ミケランを封じよと宣旨くださることこそ
ありませんでしたが、ユスキュダルの巫女と皇太子殿下の身に
危害が及ぶ際にはそれを護るにおいて、手段の是非は問わぬと」
クローバは声もなかった。
それは皇帝が、已む得ない場合にはミケランの殺害を是認したともとれるからだ。
「ところが、わたしはそうはさせたくないのです」
ジレオンは両手を広げてみせた。
「何といっても、おじ上は帝国一の功労者にして、わがレイズン家の誉れ。
汚名になりかねぬ不名誉な最期は今後の為にもいただけない。実のところ、
皇帝からその命をちょうだいした時にはこの身に震えがきましたよ。処刑宣告とは
大げさですが、ついにゾウゲネス皇帝陛下も彼を見限る時がきたのだなと。
遅すぎるほどですがね。ミケランのおじ上はとっくの昔に聖騎士国から処断されて
いたはずの方です。改新は果たされた。しかしレイズン分家の若造が英雄気取りで
出しゃばってくるようならば邪魔である。賢くもおじ上はそれを察知して以降は政治の
表舞台には出てきませんでした。皇帝が卿への贔屓を隠さず、頼りにもしておられた
為に誰にも手が出せなかっただけで、もとをただせば分家の出である彼には」
「もういい」
不愉快を隠さぬ重い声でクローバはミケランを遮った。
「それだから、レイズン家は騎士の力を失ったのだ。生まれ素性を問わず
強い騎士の血が出た者を取り立て、婚姻を厭わなかったほかの家に比べて
その血筋の衰えが目立つのだ」
「皮肉でしょうか。確かにわたしはおじ上と違い、竜神の騎士ではありませんが」
口許の笑みはそのままに、ジレオンの眼がほそまった。
「己を過大評価することなく、聖騎士家の次期統領としての自負はあるつもりです。
ミケラン卿には勇退を。そして政ごとはかつてのように、円卓に集う聖騎士家の手に」
「クローバ様」
そこへコスモス騎士が歩み寄り、何事かをクローバに耳打ちした。
クローバは動揺を顕にはしなかったが、その額は険しくなった。ジレオンは袖を直した。
「二大大国が動きましたか」
二大大国とは、帝国の双璧、すなわちハイロウリーンとジュシュベンダを指す。
ジレオンは薄く笑った。
「誇りだ何だと孤高を気取り、ご高潔と泰然自若を装いながら、平生は
他の者たちを睥睨している騎士たちも、所詮は欲深い。自分たちを出し抜いて
ミケラン卿が聖女の傍に行ったことが許せないのでしょう。巫女をめぐって
ミケラン卿に不穏の動きあり、そして皇帝陛下は卿の監視をわがレイズン本家に
お命じになった。もはや、誰も遠慮することはありませんからね」
「お前たちは結託したのか。皇帝の赦しを得て、さっそくにこの城を
包囲するつもりなのか」
「クローバ殿。わたしはむしろ貴方に協力していただくことで、おじ上の命を
救いたいと、そう思っているのです」
何しろ、ミケランのおじ上は高位騎士。ジレオンは自嘲気味に褒め称えた。
カルタラグンを討った折にみせた蒼竜のごときその剣さばきは、我が家でも
語り草になっているのです。
説得に失敗してミケラン卿が剣を抜いた時には、互角に戦える騎士がこちらにも
必要ですからね。
「続く]
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