「月蝕」




花の咲く木はありますか
雪解けのせせらぎはありますか
そこはどんなところでございましょう
例え人界遠く離れた不死山の麓でも構わない
其の國其の膝元をわたくしの
埋葬処と決めましょう
連れて行って
この命が尽きるまできっとずっと一緒です
腹の孕みに手をあて仔の動きに眼を細め
頷き微かに笑われる
あなた



月蝕に翻る銀光はその髪か
握り締めて構えた
不撓の剣の閃きか
後方に飛ぶ鮮血は
矢傷のものかそれとも
その深手より削れ失せたる残りの刻か
「よく来たな、物の怪」



今ひとたびその姿その声を
守る果敢なきものの名を



御身生きて戻らずを知る
成すべき道を往き炎に死す
己の仔を獣の眼に一度映して母たる娘に
「行け」と云う




イメージテキスト:汐崎雪野
イラスト:セガワタスク様