[カイエスブレームの翼]


競作企画 参加作品

[カイエスブレームの翼]
Yukino Shiozaki

(完結済)目次
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文章&絵 競作企画[カイエスブレームの翼]
■企画参加条件(企画サイトより抜粋。詳細は上記リンク先にて確認をお願い致します)

以下のキャラクタを登場させること。条件を満たしていればあとは自由。
・名前:ヴィルト(他に本名があるかも。好きに設定していいです)
・属性:風使い。カイト(グライダー)を使って街を渡る。
・容姿:ひょろりとして、ぼさぼさの長い黒髪に一瞬黒くも見える深い青色の目をした肌の白い少年。
   まっすぐの黒髪は大雑把に首の後ろでくくられていて、あまり切ったり整えたりした様子がない。
   ぼさぼさ。前髪は長くて、よく見るとガタガタ(ナイフで適当にジョリジョリ切るので)。
・服装:くたびれた薄手のフードつきの上っ張りを羽織り、よれよれのシャツに膝の色が抜けたズボン、
   足元には頑丈そうな皮のブーツを履き、
   首から何か紐を下げ(ただし、その先に何が下がっているかはシャツの中に入っていて分からない)、
   上っ張りに隠れた左手首には黒ずんだ銀色のバングル(何かまじない文字らしきものがかかれている)、
   手には随分と年季が入った皮手袋をしている。

・その他設定:文明的には電気と蒸気機関は不可。
   カラクリ、ゼンマイなら可。魔法は存在する。
   精霊は存在しない(か、存在しても彼にはまったく認識できない)

■有沢ケイさまによるイメージプロローグ


Prologue
 ヴィルトは、はためくカイトを聞いて体を傾けた。
 濃紺のカイトはすべるように空を旋回してゆく。
 今日はすこし風の機嫌がいいようだ。かれの口元にかすかに笑みが浮かぶ。
 マリエンシュタットが近づいてきた。
 深い森の向こうに輝くのは、かの街が抱く湖である。
 ヴィルトは風をあおってカイトの速度をあげた。
 きらめく湖の鏡のような水面をとおく見下ろして、カイトは大きく旋回する。
 カイトというやつは空に上るのは一瞬だが降りるのに距離がいる。
 いくらヴィルトが風使いだとて、こればかりはどうにもできないのである。
 湖を回りこむにつれて街のすがたが細かく見てとれるようになってくる。
 マリエンシュタットは湖を抱く大きな楕円の壁の中に小ぢんまりとした城と
 煉瓦造りの建物が整然と詰まった、模型のような街である。市壁の上に立つ警備兵に
 手を挙げて挨拶しながら、ヴィルトはさらに市壁の周囲を2度回った。
 地面が近くなったあたりでカイトを離して飛び降りると、一周して戻ってくるそれをつかまえた。
 市壁のまわりが綺麗に伐採されているのは幸いである。
 無論こんなことは誰にでもできるものではない。相当の離れ業と言える。
 他はともかくとしてカイトの扱いだけは、師匠に褒められた得意なわざなのである。
 てきぱきとカイトを折りたたんで、皮袋にきれいに収めると、
 それを背負ってヴィルトは市門に向かった。ほどなくそこにたどり着くと、
 立ち止まってぼろぼろのマントを跳ね上げて市門の警備兵に名を告げた。
 「カイエスブレームの風使い、ヴィルトです。遠くファドジィルより伝言をことづかってまいりました」

 風使いと、かれの訪れる街の物語。







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